■ ビタミン基礎知識

 

●ビタミンとは何か

 ビタミンは、身体の発育や維持に欠かせない栄養素ですが、ビタミンそのものにカロリーは含まれていません。例えば、炭水化物や糖などが体を活動させるためのエネルギー源になったり、脂肪が体を構成する働きをするのに対し、ビタミンは、一般的にタンバタ貿と結合して酵素となり、生理機能を調節して新陳代謝を円滑にする働きがあります。もともと体内で必要とされるビタミン量はわずかですが、欠乏すると歯や骨の健全な発育成長に支障をきたしたり、夜盲症や脚気など様々な疾患の原因になります。また、食欲がなくなったりうつ病にかかりやすくなったりもします。

 ところで、ビタミンには水溶性のものと脂溶性のものがあり、ビタミンA.D.Eなど脂溶性のものは体内に蓄えることができますが、水溶性のビタミンCやBは摂取後数時間で体外に排泄されるので、こまめに、できれば毎日摂取する必要があります。最近ではビタミンの抗酸化作用が老化防止や心臓病、ガンの予防につながるという研究結果も出ています。

アメリカで見直されつつあるビタミンやハーブの効用

最近では、欠乏症の予防という意味だけでなく、健康な生活を維持するためにも、ビタミン摂取の重要性が注目されています。食生活の改善によって多くの成人病を予防できるという認識が一般に広まっています。さらに、ビタミンや必須ミネラル、アミノ酸をバランス良く摂取することが健康維持に重要であるという意識も高まってきています。ビタミンCやEが持つ抗酸化作用が老化の防止、心臓病やガンの予防に役立つ可能性があるという研究結果も発表されています。アメリカでは、西洋医学で近代以降は軽視されてきた植物や食物に含まれる薬効への関心も高まりを見せてきています。すなわち化学薬品や手術などに頼りがちな現代医療のあり方を見直し、自然のものに含まれている治癒の力や、体内のバランスを重視する東洋医学に興味を持つ人々が増えているのです。それで、ビタミン、ミネラルの働き以外に、ハーブ(薬効があるとされているもの)の効力も注目されてきているのです。

 

●ビタミンの歴史

 栄養素としてのビタミンの本格的な研究は19世紀後半から始まりました。当時、西洋の研究者の間で、動物の健康な成長には炭水化物、タンバタ質や脂肪などそれまで知られていた栄養素の他に、自然の食物の中に含まれている「何か」が必要であるという認識が高まってきていました。成長に不可欠なこの謎の栄養素が「ビタミン」と名付けられたのは、実は20世紀に入ってからのことです。ビタミンという名前は「命」という意味の"vita"とアンモニアの化合物「アミン」"amin"を組み合わせたもので、ポーランド人のフンク(Casimer Funk.1884-1967)という研究者によって1911年ごろ命名され、元々は“vitamine”と綴られていました。その後ビタミンの化学的構造の研究が更に進み、中にはアミンでないものも含まれるということが明らかになったことから、1919年にはイギリスの研究者ドラモンド(J.C.Drummond)の提唱で最後の"e"を落とした"vitamin"という綴りになり、様々な種類を区別するためにA.B.Cなどの符号が用いられることになりました。現在では、約13種類のビタミンの存在が明らかになっています。

日本のビタミン研究は脚気予防から始まつた

日本でビタミン研究が始まったのは、1880年代、長期の航海に出た海軍の乗組員の中に脚気患者が続出し、脚気が原因で率亡する者まで現れたことがきっかけでした。明治政府はこの事態を何とか防ごうと、乗組員の栄養や食事についての調査を実施。その結果をもとに、航海中の食事内容を野菜とタンパク質の豊富な洋風のものに変えてみたところ、脚気に明らかな予防効果が現れました。その発見が、後に東京帝国大学卒業後ヨーロッパに留学して栄養学を学んだ鈴木梅太郎(1874−1943)に受け継がれ、1910年、脚気防止の有効成分であるビタミンB1(梅太郎はオリザニンと呼んだ)の抽出の成功につながっためです。

風邪に効果的などタミンC

初期のビタミンの研究は、主に脚気やくる病予防など、欠乏症による疾患を防ぐという発想に基づいて行なわれていましたが、今世紀後半に入ってから、ビタミンはもっと幅広く健康の維持にかかわっていることが明らかになってきました。例えば物理化学の分野でノーベル賞を受賞したボーリング博士(Linus Pauling,1901-1994)は、ビタミンCに免疫強化の働きがあり、風邪の予防に効果があることを提唱しました。そして、70年には1日1000mgのビタミンCを摂取することで風邪をひく確率が45%も下がるという説を発表しました。当初この説は一般的に認められませんでしたが、その後ボーリング博士の説を裏付ける数々の研究結果が発表され、今ではビタミンCの効果は常識として受け入れられるほどになりました。さらに、同博士は近年、ビタミンCに抗ガン効果があるという説を唱えて周囲を驚かせました。すでに博士の説の裏付けとなりそうな抗酸化作用とガン予防の調査結果も一部で発表されており、数年後にはこれも新しい常識となるかもしれません。

 

●ビタミンの種類と働き

 現在、知られているビタミンは、A、Bコンプレックス(チアミン、リボフラビン、ニアチン、B−6、葉酸、ビオチン、バントテン酸、B−12)、C、D、E、Kの13種類です。ビタミンAの一種であるベータカロチン、ビタミンCやEには、一部の発ガン物質を抑制する化学成分が含まれているという研究結果も出ています。数多くの成人病の元凶とされているコレステロールに関しても、ビタミンB群やリノール酸などがコレステロール値を下げる、あるいはコレステロールの沈着を防ぐ役割があることが明らかにされ、ビタミンの正しい摂取は高血圧や心臓病の予防に効果的であると言われています。さらに最近注目を集めているのが、ビタミンやミネラルと老化の関係です。大気汚染や喫煙、ストレスは体内を酸化させ(oxidation)、それによって作り出される遊離基(free radical)の働きが細胞を傷つけ、破壊することが老化現象の主な原因であることが解明されるとともに、ビタミンの持つ抗酸化効果が注目を浴びるようになってきました。抗酸化効果のあるビタミンやミネラルはアンチ・オキシダント(anti-oxidant)と呼ばれます。アンチ・オキシダントは、細胞を強化し老化現象を予防するだけでなく、ガンやその他の病気への細胞の抵抗力を高めることも最近の研究で徐々に明らかになってきています。

年々使用量が増えるビタミン・サプリメント

 ほとんどのビタミンやミネラルは体内で生成できないので、従来はおもに食物から摂取されていました。しかし、1970年代後半から80年代にかけて、アメリカでは栄養のバランスのとれた食事が健康管理に重要だという認識が強まり、より健康的な食品への関心が高まるとともに、食事から摂取できるビタミンやミネラルの量には限りがあることも多くの人が認めるところとなりました。1日にどれだけのビタミンやミネラルを摂取するべきかという目安"RDA"(Recommended Daily Allowance)を満たすためには、ビタミンを多く含んだ食品を毎日の食事に取るだけでなく、ビタミンやミネラルのサプリメント(一般で言うところのビタミン剤やミネラル剤などの栄養補強剤のこと)で必要な栄養素を補うことが大切だとの知識が一般に広まり、サプリメントの消費量はここ数年かなりのペースで増加する傾向にあります。

●偏った食事を補うためのサブリメント

典型的なアメリカの食生活では、どうしても脂肪分や糖分、コレステロールが高くなりがちです。野菜を始め、ビタミンの豊富な食材を中心にした食事が身体にいいことはわかっていても、なかなか実践できない人が多く、足りない分をビタミン剤で補う人が増えていることも事実です。アメリカでは、一般市民の75%が脂肪分やコレステロール過多の不健康な食生活をしているというデータが最新の調査で出ています。実際、数年前に比べると健康的な食事に関する意識は高まり、平均的な食事のコレステロール値は下がっているものの、野菜や果物の少ない偏った食事が多いようです。

 95年度のビタミンやミネラルのサプリメントの売上げは全米で22億ドルと、有機栽培の野菜などを含むいわゆる健康食品全体の約37%を占めています。これは91年度と比べて51%の増加になり、いかにビタミンやミネラルへの関心が高まっているかがうかがえます。以前は「ビタミンは食物から取るのが一番」という考えにこだわり、食事内容の改善を重視してあまりサプリメントの使用を勧めない医師や栄養士が多かったのですが、最近では積極的にサプリメントを毎日の健康管理の一部に取り入れることを主張する専門家も増えて来ました。

安全性を考慮した製品管理

1938年以来、アメリカではサプリメントは薬品ではなく食品として分類され、政府による規制やラベル表示も食品と同様の基準が用いられてきました。41年には、1日に最低限摂取するべき栄養素の基準(現在のRDAの前身ともいえるもの)が初めて制定され、その後栄養学の新しい調査結果などをふまえ、RDAは何度か改訂されて来ました。現在のRDAは95年に改訂されたものです。ビタミンやミネラルの研究が進み、様々な治療効果をうたったサプリメントが一般に広く売られるにつれて、70年代にはアメリカで、サプリメント全体を薬品としてFDA(Food and Drug Administration=食品医薬品局)が規制するべきだという声が高まりましたが、結局、法律になるまでには至らず、現在でも例外的に薬品とみなされる場合以外はほとんど食品同様に扱われています。しかし、ビタミンの多様な医療効果が解明されてくるに従って、病気の予防や治療の目的でサプリメントを服用する消費者が増え、’ビタミンの効果についての誇大広告を防ぎ、消費者に正しい情報を伝達する必要性が高まりました。そこで米政府は95年にサプリメント規制の新しい法律を制定して、ビタミンやミネラルの効用についての表示を厳しく管理するようになったのです。サプリメントの成分表示の基準をはっきりと定め、使用期限などの表示を義務付けることでサプリメントの安全性を保証する努力も続けられています。

年齢や性別で異なるサプリメントの取り方

自然食品やサプリメントの消費者の多数は女性で、男性の2倍近い数となっています(★1)。年齢層では35歳以上65歳未満のグループが全体の60%を超え、次に20歳以上35歳末満の18%、カルシウムやビタミンDなどビタミンの摂取を最も必要とする65歳以上は16%にとどまっています。サブリメントには錠剤やカプセルだけでなく、子供むけの噛み砕いて服用するチューアブル・タブレットなどの形があり、1種類のビタミンを主成分にしたものと、ひとつの錠剤で複数のビタミンが朽取できるマルチ・ビタミンとに分けられます。サプリメント使用者を対象とした最近の調査によると、ビタミン・サプリメントの中で最も幅広く使われているのはビタミンCで、複数のビタミンが手軽に摂取できるマルチ・ビタミンが2番目に人気があります。その他にもビタミンE、カルシウム、ビタミンBコンプレックスや鉄分を含むマルチ・サプリメントなどがポピュラーなものとして挙げられます。 93年から95年までの3年間で、アメリカでのビタミン、ミネラルなどのサプリメント消費量は50%以上増えています。医療費の高いアメリカでは、保険制度の変革とともに治療重視のヘルス・ケアから病気予防を中心に考えたシステムヘと移行しつつあります。つまり、いったん病気にかかって通院や手術を受けることになると莫大な医療費が必要になるため、病気にならないように誰もが普段から健康管理に気をつけるようになったわけです。言い換えれば、ビタミンやミネラル摂取量の増加は、健康維持と病気予防への関心の高まりと深い関係があるのです。ビタミン剤を使う理由としては、病気の予防が62%と最も多く、次いで体力増強、フィットネス効果、集中力アップ、ストレス対策などが挙げられています。また、調査に参加した2割以上の人が、身体的な病気の治療やうつ病の治療としてビタミン剤を服用していると答えています(★2)。

ビタミン剤が万能という考えは大きな誤解

ビタミンやミネラルのサプリメントについて誤解されやすいのは、ビタミン剤を摂取しているだけで健康な生活を送っているような錯覚に陥ることです。ビタミンCが喫煙による害を減らす可能性があるという研究結果がニュースになったとき、街頭でインタビューされたスモーカーの多くは「ビタミン剤を飲んで、心おきなくタバコが吸える」と喜んでいましたが、どんなにサプリメントでビタミンや必須ミネラルを摂取していても、身体に害のある習慣を続けていては意味がありません。また、ビタミンは適量を超すと体に負担をかけ、かえって具合が悪くなるものもあるので、1日の抜取量の目安を守ることが大切です。(★1.★2店頭での調査なので、実際のサプリメント摂取の割合とは別。女性が多いのは家族のためのビタミン剤や自然食品を買いに来ることが原因とも考えられる。)

 

●ミネラル Mineral

ビタミンとともに重要なのがミネラルです。ミネラルは、カルシウムやマグネシウムなどのように骨や歯の構成物質として大事な役割を果たすだけでなく、ナトリウムやカリウムのように体内のイオン・バランスを保つ働きもします。またミネラルは筋肉や神経にとって大切な構成物質でもあります。健康維持に不可欠なビタミンも、ミネラルの助けがなければ効果を上げることはできません。体内のミネラルはビタミンや他の栄養素の消化、吸収を助けるだけでなく、体内の栄養素の循環にも役立っています。コレステロールの分解や老化の防止、ガンや心臓病のリスク軽減に役立つとされるミネラルもあります。人体には約60種類のミネラルが存在しますが、その中でも体の機能の調整と維持に不可欠とされている必須ミネラルには、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、鋼、リン、ヨウ素、マンガン、セレニウムなど約22種類があります、アメリカでは必須ミネラルのうち、12種類について、1日の摂取量の目安となるRDAが定められています。 現代人の食生活ではカルシウムと鉄分が足りなくなりがちで、特に女性は生理や出産、授乳時など、カルシウムや鉄分を普通より多く必要とする時期に、欠乏症に陥りやすくなります。骨や歯の構成成分であるカルシウムの重要性については多くの研究がなされており、幼年期、青年期の健康な発育のためだけでなく、高齢者に多い骨租そう症の防止にも十分なカルシウムの摂取は欠かせません。鉄分は血液中のヘモグロビンの構成成分で、体内の酸素の循環に重要な役割を果たします。鉄分の不足は、激しい運動時やストレス下に置かれたときなど、体内の細胞が酸素を多く必要とするとき、体に支障をきたす原因となり、貧血や疲労感につながります。カルシウムは食品に、鉄分は緑黄色野菜に多く含まれていますが、食事だけで十分に補給できないときはサプリメントで適度に補うとよいでしう。カルシウムのサプリメントは、マグネシウムとともに摂取すると、その吸収がより効果的であると言われています。セレニウム、マンガン、亜鉛は老化現象などを防ぐアンチ・オキシダントであるとされていますが、体が必要とする量は微量で、通常の食事だけで十分補給でき、欠乏症となることはほとんどないようです。

 

●アミノ酸 Amino Acid

 アミノ酸とはタンパク質の構成物質で、DNAやRNAなどの遺伝子の構造に欠かせないものです。また、抗原体となって病原菌やバクテリアなど体に害のある侵入者に抵抗する役割ももっています。アミノ酸には22種類あり、そのうち8種類が体内では生成できない必須アミノ酸となっています。アミノ酸の中には成長ホルモンの分泌を促進して筋肉の発達を促すものや、免疫を高めアレルギー症状に効くものの他にも、精神安定効果がありうつ病やアルコール依存の治療などに使われているものもあります。しかし、精神病の治療などに使われるアミノ酸のサプリメントには有害な副作用が見られるケースが報告されており、アミノ酸の効用と副作用についてまだまだ研究が必要なのが現状です。安全なサプリメントの摂取は専門家の指導に基づいて行なうことをお勧めします。肉や魚など食物から自然にアミノ酸を摂取する場合には、余分なアミノ酸は肝臓で消化されるので問題はありません。

 

●ハーブ Herb

ハーブ(薬草)は、大昔から世界中のあらゆる地域で病気の治療や予防のために使われてきました。中国では不老不死を理想とする道教の影響で、薬草による長寿や健康維持に関する研究が紀元前から行われてきました。ヨーロッパでも、古代ギリシャやローマの時代から、植物と医療の結びつきは強く、ルネサンスの時代には古代のハーブ研究や栽培法に関する知識が再評価されました。また、現在もカトリックの総本山バチカンでは、当時の植物学研究の書物が保存されているだけでなく、ハーブ・ガーデンで様々な薬草の栽培も行なわれています。生薬をベースにした漢方薬は、中国だけでなくアジアの各地で現在も利用されています。一方、西洋では近代に入ってから科学的に合成された薬や治療法が全盛となり、科学的裏付けの弱いハーブ療法はあまり用いられない傾向にありました。しかし、最近ではガンやエイズの治療法研究の一環として自然の植物が持つ薬効に関心が集まるにつれて、生活の知恵として伝えられてきたハーブの働きの多くにも科学的根拠のあることが明らかになりつつあります。ただし、エイズやガンなどの治療にハーブを使っているのはごく一部の実験的なレベルで、ハーブ療法が医療手段の一部として認められるまでにはまだ多くの研究を重ねる必要があります。現在のところ、健康を維持するために食生活の一部にハーブを取り入れたり、病気というほどではないけれど、ちょっと調子が悪いというときや、ストレスがたまっているときに、体をリラックスさせたり、エネルギーを補給する意味で活用するのが最適と言えるでしょう。

 ハーブ療法と言えば、ハンドクリームに使われるアロエが火傷やニキビなどの皮膚の治療に効果があるのはよく知られていますが、ニンニクやショウガなど、ごく身近な食べ物にも免疫を高めたり、コレステロール値を下げたりするカのあることが、医学的にも検証されるようになってきています。ミントやカモミールなどのハーブ・ティーは、神経が高ぶって眠れないときや、軽い頭痛、鼻づまり、ストレス解消などに役立つと言われ、注目を浴びています。また、市販のハーブ・ティー以外にも、バジリコやショウガ、ローズマリーなど、日常の料理に使っているスパイスを活用して、家庭で手軽に作れることも魅力の一つのようです。

 

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